スタッフ

(制作・編集・監督)山﨑裕侍
制作・編集・監督/ 山﨑 裕侍
1971年生まれ。北海道千歳市出身。大学では探検部に所属。湾岸戦争時、難民キャンプでのボランティアや中国の少数民族との共同生活など活動。卒業後、東京の制作会社入社。テレビ朝日「ニュースステーション」「報道ステーション」ディレクターとして犯罪被害者や死刑制度を取材。1989年に起きた足立区綾瀬コンクリート詰め殺人事件の加害者を特集し大きな反響を得る。2006年HBC中途入社。警察・政治キャップや統括編集長を経て現在は企画デスク。ディレクターとして臓器提供の現場を密着した「命をつなぐ~臓器移植法10年・救急医療の現場から~」や地域医療の課題を追った「赤ひげよ、さらば。~地域医療“再生”と“崩壊”の現場から~」など多くのドキュメンタリーを作る。プロデューサーとして「ヤジと民主主義」「クマと民主主義」「ネアンデルタール人は核の夢を見るか~“核のごみ”と科学と民主主義~」「性別は誰が決めるか~“心の生”をみつめて~」などを制作。日本民放連盟賞・ギャラクシー賞・文化庁芸術祭賞・放送文化基金賞など受賞。デスクになってもデジカム片手に自ら現場取材し企画を放送。本作品も素材をすべてプレビューして構成を立て、年末年始自ら荒編集した。著書に「ヤジと民主主義」。趣味は登山。
ジャニー喜多川氏の性加害問題で「メディアの沈黙」が指摘されている。
だが「メディアの沈黙」によって被害の拡大を止められなかった問題はほかにもある。水俣病、ハンセン病の隔離政策、旧優生保護法による強制不妊手術など。権力とメディアのあり方が今もなお問われ続けている。
そのなかで映画「ヤジと民主主義 劇場拡大版」を上映する意味はますます高まったと確信している。 1つ目は、「おかしい」と声を上げることの大切さ。そして声を上げたときに権力がいかに暴力的に声を封じようとしてくるかというもの。首相に向けて飛ばしたヤジは警察の力によって封じられた。だが彼ら/彼女らは負けてはいなかった。その姿をみて、若者への期待と未来を感ぜずにはいられない。
2つ目は、権力に忖度せず、沈黙しないメディアの重要性である。北海道警察によるヤジ排除問題をしつこく報道し続けたのは、残念ながら私たちだけだった。中には沈黙を守ったメディアもある。人権侵害に対する沈黙は加担を意味する。それは世界中のいたるところで起きている。
「4年前の終わったこと」では全くない。裁判はまだ続いているし、そのなかで警察は自らの非を認めていない。法的根拠がなく行われる警察活動、民主主義社会のなかで声を上げることの重要性、対するメディアの沈黙や忖度は、現在進行形の問題である。
そんな時代にぼくたちはどうやって闘うのか、メディアはどうあるべきか、その問いに対する答えが、この映画にある。
(取材)長沢祐
取材/ 長沢 祐
1993年3月24日生まれ、北海道出身。早稲田大学卒業後、民間金融機関の営業マンを経て、2018年HBC入社。コンテンツ制作センター報道部で司法キャップ、道警サブキャップを担当。治安維持法関連の「生活図画事件」や新型コロナウイルスによる旭川の医療崩壊、乗客乗員20人以上が死亡した知床観光船沈没事故などを取材。ドキュメンタリー番組「ヤジと民主主義」でギャラクシー賞報道活動部門優秀賞、日本ジャーナリスト会議によるJCJ賞、地方の時代映像祭などを受賞。コロナ禍の救急医療に密着した「救いたい命」を制作。
当時新人記者だった私は、まさかこの問題が映画になるとは思ってもみませんでした。「おかしいことはおかしいという」そんな当たり前のことを取材し続け4年。声を上げる大切さと難しさを追い続けました。