コメント

敬称略・順不同
落合惠子(作家、クレヨンハウス主宰)
落合惠子 (作家、クレヨンハウス主宰)

「損得」と「忖度」。言葉の響きが似ているのも腹立たしいが、この二つが絡み合った
政治はいつまで続くのか。一市民としての当然の権利、表現の自由を拒絶する社会において、わたしたちは一体なにが可能なのか。踏まれたビスケットのように崩れつつある民主主義をまずは取り戻すために、何ができるのか。騒いでどうなる? なにも変わりはしない、と薄い笑いを浮かべて諦めるしかないのか。この流れにブレーキをかけることができるのは、ジャーナリズムであり、わたしたち、ひとりひとりの市民しかいない。いや、ジャーナリズムに身を置くものも、まずは自らが一市民であることを忘れてはならない。
言葉を発することに、ある種の覚悟を要するこの時代に、沈黙を破る思想と姿勢を後押ししてくれる本作品。しっかりと受け止めたい。もの言わぬジャーナリズムや市民が、もの言えぬ社会をつくることを、改めて心に刻んで。

前川喜平 (元文科事務次官)

「たかがヤジ」という話ではない。警察による身体の自由や表現の自由への明らかな侵害だ。それはしっかりと映像に記録されていた。命令があればカメラの前でも躊躇なく人権を侵害する警察官たちの「素直さ」が恐ろしい。検察は起訴せず、道知事も問題視せず、体制側は問題なしで済ませようとする。しかしこれは自由と民主主義の根幹にかかわる問題だ。そこに鋭い警鐘を鳴らすのがこの映画だ。テレビ放映版に比べ、劇場拡大版は札幌地裁と札幌高裁の判決を取材して、日本の司法の在り方にも切り込んだ。人権を尊重する当たり前の判決を書いた札幌地裁の裁判官に対し、道警を勝たせるため牽強付会の判決を書いた札幌高裁の裁判官。この映画の続編の舞台は最高裁だ。

鎌田慧 (ルポライター)

若者への期待を感じ、勇気を与えてくれる映画だ。

最初はひとりで立ち上がった若者たちの運動が、4年間で彼らは色々な困難を乗り越え、どんどん成長し、支持を受けて運動が広がっていった。「人に迷惑をかけない」という言葉があるが、迷惑ではなく正しい主張であって諦めずに続けている。それを報道しようとするものが現れた。最高裁でどういう判決が出ようと、若者たちの主張が正しいことは映画で証明できている。

映画は歴史を掘り下げ、個人の内面を描く。若者2人の表情がいい。

ダースレイダー (ラッパー)

僕は日本は民主社会ではないと繰り返し言っている。
ただ、大杉さんや桃井さんのヤジが民主化への1歩目にもなり得る。
あとは周りにいた傍観者たちやこの映画を見た僕らがその道を共に歩めるかどうかだ。

上出遼平 (映像作家)

徒労に次ぐ徒労。
後の後の後の祭り。
もうこうなってしまったら手のつけようがない。
暴力がご都合主義の正義と結託してしまった。
選挙だけが健やかだった時代に動くべきだった。
今では選挙さえ、病んでしまって機能を果たせない。
——悲劇の底で、いつか私たちはそう嘆くだろう。

綿井健陽 (ジャーナリスト・映画監督)

「ヤジの自由」と「ヤジに対する対応」は、その社会の中での異論の度合いがわかる。
北海道警が排除しようとしたヤジは、今も生きている。
暴力には反暴力を。権力には抵抗を。言葉には言葉を。ヤジにはヤジを。
この映画自体が、日本社会に放つヤジだ。

松元ヒロ (芸人)

最初は「ヤジを飛ばしたくらいで、プラカードを掲げたくらいで警察官に排除されるそんな日本」と暗くなったのですが、映画を観ていると、段々と怒りに変わり、同じようにヤジを飛ばしたくなり、声を上げる彼らを見て「私たちも!」とプラカードを掲げる人々を見て泣きそうに。そして、みんなで「爆弾飛ばすより、ヤジを飛ばそう、声を上げよう、これが民主主義なんだ!」と元気が出てきました。勇気が湧いて、希望が見えてきました。

カメラで追い続けた北海道放送にも拍手! これぞ「放送法」に準じた番組! その映画化。胸が熱くなりました。私もあきらめずに舞台で声をあげ続けるぞ!

大谷昭宏 (ジャーナリスト)

言論を封鎖しようとした者は結果,自らの言論を永遠に圧殺されることとなった。そのことに,いままでも,そしてこれからも,手を貸し続けるのはだれなのか。このドキュメンタリーは,その答えを出している。

吉田徹 (同志社大学政策学部教授)

彼らが発したのは「ヤジ」などではない。「生きさせろ」という、私たち1人1人の声の代弁なのだ。その声を取り上げては決してならない。私たちのためにも。

香山リカ (精神科医)

有権者のひとりとして、政治に積極的な関心を持ち、発言する機会があれば逃したくない。それは市民の当然の権利というより、むしろ社会の一員としての義務にも近い。いわれなき排除を受け、思いもかけず「原告」として裁判に立ち向かうことになったふたりこそ、“真っ当な市民”だ。

佐高信 (評論家)

この国の民主主義の現在(いま)を教える

表現の自由とは批判的言論の表現の自由である。
権力は批判されなければどんどん肥大していく。
自民党ながら野党に推されて参議院議長となった河野謙三は「七三の構え」ということを言った。
与党の力はもともと強いのだから、野党に比べて三割大事にするだけでいい。
野党を七割大事にしてはじめてイーブンとなるということである。
それを最も忘れているのは警察と裁判所だろう。
彼らは与野党五分五分どころか、与党に寄るのが役目だと思っている。
この映画は日本の民主主義がいかに危ない淵に立っているかを教える。
これを観るだけでなく広げることが縮小されているこの国の民主主義を少しでも維持する道である。

ピーター・バラカン (ブロードキャスター)

ヤジを飛ばして排除されるシーンが映像で物的証拠として残っていることに驚きました。少数派の意見がこのように押さえ込まれるのは明らかに民主主義に反することで、見ていて憤りを感じます。おそらくぼくと同じようにこの事件のことを知らなかった方が少なくないではずですから、こうやって映画として知られていくことは有意義なことだと思います。ヤジや少数派の意見の弾圧を放置しておくとこれからも発生する可能性が大いにあります。皆がこういうことを知って、様々なな意見を体制側の人たちにきちんと届けなければ、何のための民主主義か分からなくなります!

森達也 (映画監督)

観終えて脱帽。いや帽子を脱ぐくらいじゃ足りない。
1時間40分はあっという間。とても秀逸で、問題提起は深い。
そして何よりも、めちゃくちゃ面白い。
制作はHBC。つまりテレビ局。そして山﨑はテレビディレクター。
でもこの作品は政治権力に対して一切忖度しない。
モザイクはほぼない。見事だ。土俵際いっぱいで炸裂したメディアの矜持がここにある。

深田晃司 (映画監督)

見ておいて損のない100分間。
裏金問題が噴出する今、いかにこれまで当たり前のような顔して異様な社会がそこにあり続けていたのかが写し出されていました。